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野鳥の見分け方

 

フィールドガイド日本の野鳥より

その1 野外で役立つ親切な図版

1982年に当会が発行した『フィールドガイド日本の野鳥』は、英語版がアジア各国に寄贈されるなどして世界でも高い評価を受けました。もちろん日本でも野鳥観察をする人を増やし、新たな発見や観察例が全国で相次ぐ契機になりました。
 その後、この通称「高野図鑑」で学んだ人たちがさまざまな図鑑に取り組んで来ましたが、今なおバイブルとして愛用され続けています。
 『フィールドガイド日本の野鳥』で解説も図版も担当した故・高野伸二さんは、植物や虫にも詳しく、野鳥やクモの生態写真でもパイオニア的存在として多くのナチュラリストに慕われていた方です。日本鳥学会や当会での要職、当会東京支部長などを歴任され、全国での観察を続けつつ、数々の著作や本誌での連載でも活躍された豊富な経験が、野外携帯用図鑑の限られたスペースに凝縮されて同書が生まれ、「高野図鑑」と呼ばれるようになりました。
 現在、当時はなかった写真や文献を元に、より緻密に鳥を描くこともできるようになりました。でも、フィールドガイドは野外で使えてこそフィールドガイドです。高野さんが描いた図版のその鳥らしい表情や雰囲気、ポーズなどの数々に追随できるものは未だにないと思いますし、高野さんの図版だったからわかったという方がたくさんいるに違いありません。 
 例えば①をご覧ください。似た鳥が並んでいて比較しやすいだけでなく、よく目にするホオジロのさえずっている姿が添えられています。また、鳥たちは食いだめがきかないので野外ではしばしば採食場面に出会いますが、②のように習性とともに描かれている図も少なくありません。③のような特徴的なポーズも心憎いばかりで、種の識別に終わらない観察の幅広さや奥深さも教えてくれます。
  実際に野外で困るのは、同じ鳥でも向きや角度、動作や姿勢によってはまったく違って見えることですが、高野さんは正面からも、後ろからの姿もたくさん描いてくれました。その上、④のような比較図もあります。同じ種でも亜種やタイプ、個体差が多い鳥にも悩まされますが、⑤⑥のような過不足ない図で助けられた人も少なくないでしょう。“よく飛んでいる鳥”や“翼を広げないと識別ポイントが見えない鳥”については、もらさず飛翔図があることはもちろんですが、「さすが高野さん!」と感心させられるのは、チェックすべき識別ポイントによく見られるポーズが描かれている図です。⑦は伸びで翼下面を、⑧は飛び立ちや寝ている姿で翼下面や腰の色を表しています。

その2 識別にとどまらない詳しい解説

 高野さんは種ごとの解説の前に、「野鳥の見分け方」で5頁を費やし、仲間ごとの解説に続いて種を紹介しています。科を単位とした解説では世界分布や繁殖習性なども書かれています。私はこれらを読んで、ミソサザイがアメリカ起源であるとか、ゴジュウカラが巣穴の入り口を泥で小さくする習性などを知りました。
 種ごとの声や習性についても近年の図鑑以上に詳しい記載が多くて、カワラヒワの巣立ちビナがチュンチュンチュンと続けて鳴くこと、サンコウチョウは雌もさえずること、イカルがイラガのまゆを嘴でつぶして食べることなど、枚挙にいとまがありません。
 私は生前の高野さんから野鳥の行動を観察するおもしろさを教えてもらい、以来、野鳥の頭のかき方を観察テーマのひとつにしています。「スズメ目に分類される小鳥の多くは“間接頭かき”をする」と聞き、木の幹に尾の支えなしにとまるゴジュウカラが、どうやって下げた翼の間から足を出す間接頭かきができるのかと、観察を続けていました。ある日、ゴジュウカラが木の実を隙間に挟み割って食べる場面に出会いました。「これは新発見ではないか!」と興奮したのですが、念のためにと読んだ「高野図鑑」には、すでにその習性が記されていたのです。
 数年後、ゴジュウカラは普通の小鳥のようなとまり方をして間接頭かきをすることを突き止めましたが、「高野図鑑」には幹にとまる典型的な図のほかに⑨のような図まで描かれていました。

その3  地域による違いもわかる分布図

種ごとの野鳥分布図を東アジアという範囲で示したのは、「高野図鑑」が初めてです。私はそれによってヒヨドリやコゲラが日本近辺にしかいないこと、日本で冬鳥のジョウビタキ⑩・ミヤマホオジロ・シロハラがお隣の韓国では一年中見られることなどを知りました。その後、世界の分布図を掲載した図鑑も出版されましたが、世界を描くと日本が小さくなってしまい、日本国内での分布の違いや季節移動を表しにくくなります。例えば、イソシギやキセキレイを留鳥としている図鑑もありますが、「高野図鑑」の分布図⑪からは北海道では春夏しかいないし、南西諸島では秋冬しかいないことがわかるのです。

その4  会員の協力で1989年に増補版出版

 高野さんが書かれた「はじめに」の謝辞には分布図の作成者へのお礼に続いて「先輩諸氏の図鑑や会員の方々の写真をおおいに参考にさせていただきました」とあり、さらにこの図鑑の編集委員へのお礼が記されています。
 また、本誌1982年8月号でも「千七百余羽の図を書き終えた後に編集委員から二百八カ所も直すようなチェックを受け、落ち込みながらも気を取り直してすべて書き直した」と編集委員の尽力に触れています。
「高野図鑑」を契機に全国で新たな野鳥記録が多数報告されるようになっていた1984年、悲しいことに高野さんは他界されてしまいましたが、会員の方から寄せられた野鳥記録を検討する野鳥記録委員会(当時)の検討結果を反映させた増補版が、1989年に発行されます。「高野図鑑」で編集委員だった森岡照明さん・叶内拓哉さんの解説と、谷口高司さんの図版で31種を加えたものですが、これらの経緯から「高野図鑑」は増補版も含めて、当時の野鳥の会の力を集めて生まれたとも言えると思います。

増補版発行以降の成果と課題

 1989年増補版の発行以降、より多くの種を扱った図鑑や、地域ごとの図鑑も相次いで出版され、シギ・カモメ・タカなどのよく似た種が多い仲間では、仲間ごとの識別ガイドも出版されるようになりました。海外の文献や標識調査から得られた知見も広まってきました。標識調査は許可なしには実施できませんが、野鳥を手にとって調べるので、羽1枚ごとの模様や形状、枚数に至るまで確認でき、これまで野外識別は不可能とされてきた種や亜種、雌雄や年齢も見分けられるような知見が増えてきました。
 一方、そのため多くのことがわかっているとの誤解が広がり、すべての野鳥が見分けられると思い込む人が増え、誤認や混乱も増えてしまった側面があります。インターネットなどで定かでない識別や珍鳥の情報が飛び交うようにもなって、経験の少ない方が悩んだり、マナーを知らない人がひんしゅくを買ったりする事態も耳にします。
 今回の増補改訂版では、フィールドマナーには1頁を割いて掲載しましたが、識別の注意点は、高野さんがすでに述べています。「野鳥の見分け方」の一文曰く「良識ある野鳥観察家(※当時まだバードウォッチャーという言葉は一般的ではなかった)は、いつでも見分けられるものではないことをよく知っていて、十分に見ることができなかった場合には、はっきりと鳥の名は言いません」。
残念ながらこの一文が理解されているとは言えず、一見しただけの限られた識別点で同定を誤る例が散見されます。高野さんが気配りしつつ随所に丁寧に記してきた基礎的なことを知らないままに専門的な知見に触れて、細部にこだわって間違う例も増えているようにも思えます。

今回の増補改訂版に至るまで(関わった人たち)

 「高野図鑑」のフィールドガイドとしての素晴らしさは揺るぎないものです。が、増補版以降も観察された種や新たに分かったことは増え続けています。また、日本鳥学会の『日本鳥類目録』も改訂版が出されて分類や名前にも変更が多々ありました。それらに対応し、優れた高野著作を歴史的遺産としてこれからも活用させていただくには、増補改訂に取り組むしかないということになり、昨年6月、高野伸二さんを支えてこられた奥様の高野ツヤ子さんに相談に出向きました。当時の編集者や、編集委員からもさまざまなご意見を伺いました。
 私は、子どものころ、厚かましくも鳥の質問に高野さんを訪ね、謙虚な高野さんに拍子抜けして以来、師と仰いできました。1998年に、「高野図鑑」より初心者向けという位置づけで『新・山野の鳥』『新・水辺の鳥』の解説を担当しましたが、今回はツヤ子さんとご相談させていただいたことから増補改訂に関わる決心をし、さらに3人に関わっていただくことになりました。
 叶内拓哉さんは相談に出向いたところ、全面協力してくれることになりました。図鑑の編集委員や野鳥記録委員を歴任され、増補版ではスズメ目の解説を担当されています。改めて紹介するまでもないほど多くの著作や講演を通じて野鳥の世界では著名な叶内さんですが、私より10年も前、やはり子ども時代に高野さんとの出会いがあり、自動車を運転しなかった高野さんのアッシーくん(運転手役)として共に全国を駆けめぐった仲でもあります。
 編集委員だった方からは「高野著作は高野作品としてそのまま残すべき」という意見もあった一方で、「増補改訂に取り組むなら新たな人材、若い人を登用すべき」というお話をいただいていました。
 そこに、登場したのが田仲謙介さんです。小学5年生の時、近所にできた横浜自然観察の森で虫採りしていて、当時レンジャーだった古南(現・当会自然保護室長)に見つかったのがきっかけで鳥にも興味を広げ、観察の森のジュニアレンジャーになりました。やがて、青年海外協力隊でボルネオに渡り、そこで山階鳥類研究所の指導を得ながら鳥類標識調査を始め、サラワク州のラムサール条約関係の調査や環境教育プロジェクトにも従事しましたが、なんと当時ボルネオに持参したのが、小学6年生の時にご両親からプレゼントされた「高野図鑑」。「以来、お世話になってきた図鑑なので恩返しをしたい」と、膨大な資料のチェックや追記種の執筆まで手がけてくれました。
 新たな図版については増補版でも『新・山野の鳥』でもお願いしたイラストレーターの谷口高司さんが「高野著作を世に残すために」と担当してくださいました。アメリカのスミソニアン博物館にも認められ、鳥の絵を提供されていますが、ガの研究をしていた学生時代に高野さんに出会って高野ファン、野鳥ファンになった経緯があります。
 今回の増補改訂でどんな種を加えたのかは、52頁の「教えて? 安西さん」でも触れましたが、次号で何を目指してどのような改定をしたのかをご紹介したいと考えています。

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